毎日のようにニュースで見ていた時は全然わかってなかったけど、今回この本を読んで「こういう事だったのか」とようやくこの問題がわかりました。
そして今まであまり関心が無かった政治や政治家や、何か知らんけどエライとか権力者とか言われるような人の事をちょっぴり考えました。
作品紹介
タイトル | 私は真実が知りたいー夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ? |
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作者 | 赤木雅子/相澤冬樹 |
出版社 | 文藝春秋 |
初版発行年 | 2020年7月15日 |
あらすじ
近畿財務職員の赤木俊夫さんが自ら命を絶った。
森友事件の公文書改ざんを命じられていたとする遺書を残して。
前半は妻の赤木雅子さんが、夫の死から国を提訴、俊夫さんの遺書を公開するまでの苦悩や葛藤をつづった手記。
後半は森友事件をずっと追っていたジャーナリストの相澤冬樹さんのルポが掲載されている。
感想
仕事熱心で優しくて明るかった夫がなぜ自分で死を選ばなくてはいけなかったのか?
彼に何があったのか?
誰が彼に何を言い、何をさせ…とにかく何で?どうして?こんなことになったのか。
本当の事を知りたい。
妻の雅子さんがそう思うのは当然のことです。
この本が出版されたのは2020年7月。
私が読んだのは2022年10月。
本当の事はまだ何ひとつ関わったとされる人たちの口からは明らかにされていない。
誰も謝罪していない。
本を読みながら“憤り”でいっぱいになりました。
「本当はみんな人柄は良いんです。ただ組織の歯車の中で狂わされた…」
という財務省OBの言葉があったけれど、組織や何かを守るために赤木さんの死は消されてしまった。
不正は不正ではなくなり、悪は悪でなくなり、真実は隠される。
あ~、そうだ。
映画「新聞記者」でも、組織の歯車の中で松坂桃李(役名忘れちゃったよ)は、真実を突き止めることは出来なかったんだった。
何なんだよ、いったい。
赤木雅子さんは多分、ごくごく普通の主婦だと思います。
突然の夫の死の直後から、官僚だとか警察だとかとても大きなものを相手にたった一人で頑張ってこられたのを彼女の手記を読みながら私まで心臓ばくばくしたり、悔しかったり、悲しかったり。
遺書を見つけた時。
なにがなんだかわからないうちにコピーを取られ、慌ただしく動いていく警察。
夫の死に気が動転している中で、何かが彼女を置いてバタバタと動き出しているような感じ。
ここから先は行動、返事、1つも間違えてはいけないことばかり。
“組織”がぬかりなく隠ぺいに向かってすごいスピードで動き出している中、何もわからないまま戦っていくことの怖さ。不安。
そして、裏切りと疑心暗鬼。
最初の弁護士と上手くいかない。弁護士の言っている言葉がわからない。話している内容が理解できない。
この先、どうすればいいのか方法がわからない。
誰を頼ればいいのか、
味方なのか敵なのか、
ただ利用されちゃうだけなんじゃないか。
訴えても「認諾」されて裁判することさえできない。
“ズルい” “卑怯”
欲しかったのは裁判に勝つことではないし、もちろんお金でもない。
「何があったのか本当のことが知りたい」
ただそれだけなのに。
結局、官僚の方達は何も言うことが出来ない。
もしかしたら本当は心苦しく思っていたり、打ち明けたいと思っている人がいるかもしれないけれど。
それだったら、もうこの人達相手に裁判を起こしたり戦うのは止めて世論を味方につけるしかないような気がします。
今、「森友問題」で検索するとお金の部分ばかりがでてくるのだけど、人が一人亡くなってるんです。
あの一言がなかったら。
あの写真がなかったら。
直接関りが無かったとしても、とっても大きな原因を作ってるんですよ。
彼のお墓の前で手を合わせて欲しい。私でも思う。
残された人は、彼が何に苦しみ悩んでいたのか、
わかりたかった。救いたかった。
ずっと思うだろうし、悔しくも思うでしょう。
多趣味な方だったそうで、定年退職しておじいちゃんになってもいろんな趣味を楽しんだり、二人で旅行をしたり、きっとそんな日々を過ごしてたんだろうな。
甥っ子たちと遊ぶ姿、結婚式、新婚旅行…何枚かの写真も載っていました。
どれも笑顔で楽しそうで幸せそうな写真ばかり。
彼の人柄がそのまま出ているような優しそうな笑顔の写真。
そして、最後の一枚の写真。
本を読み終わってもずっとこの写真が頭から離れませんでした。
彼が変わっていく様子をずっとそばで見ていた雅子さん、本当に心配だったでしょう。辛かったでしょう。
何が彼をこうさせたのか。
やはり本当のことが知りたい。
そして、赤木さん本人だけでなく周りの人達にもたくさんのものを奪った“組織”の人達。
赤木さんのお墓の前で、きちんと彼に話をして欲しい。
本当にそう思います。