グイグイと引き込まれるように一気読み。
今まで何気なく見ていたクイズ番組の見方がちょっと変わるかも。
人の“脳”とか“記憶”ってスゴイ!不思議!面白い!
作品紹介
タイトル | 君のクイズ |
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作者 | 小川 哲 |
出版社 | 朝日新聞出版 |
初版発行年 | 2022年10月7日 |
あらすじ
テレビ生放送のクイズ番組「Q-1グランプリ」
クイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆と決勝戦を迎えていた。
両者は一進一退、きわどい戦いを繰り広げていたが出題者が次の問題を読み上げようとした時。
まだ一文字も読み上げていないうちに、本庄絆のランプが光った。
気持ちがあせってボタンを早く押し過ぎたか…と、三島玲央を始め誰もが思うなか本庄絆はそのクイズに正解し優勝を勝ち取ってしまう。
ゼロ文字解答で正解する…そんなことがあるのか?
それは可能なのか?
ヤラセか?
それとも本庄絆は真のクイズプレーヤーなのか?
三島玲央は「本庄絆」と「ゼロ文字解答」の謎を一つずつ解き明かしていく。
感想
まずは。
クイズプレーヤーの思考、クイズプレーヤーの頭の中で起こっていること、が面白い。
「わかったから押す」では全然全くダメで「わかりそうと思ったら押す」
そして、この押した時点では答えはまだ出てなくて押してから答える数秒間で自分の頭の中の引き出しから答えを引き出す。
頭の中フル回転!!
問題の流れを予測したり、
「~を」「~が」「~は」「~の」…これらの言葉を深読みしてみたり、
出題者の言葉一文字も聞き逃さず、口の形、呼気から次に発する一文字を予測したり。
単に物知りとか頭イイとかだけではなく瞬発力?スピード感?これはもう頭のスポーツ。
「クイズ」という競技じゃん。
主人公・三島玲央が “ゼロ文字解答” をした「本庄絆」というクイズを解く物語。
こんな事ってあり得るのか?
インチキではなく本当に可能なのか?
一つ一つ丁寧にナゾを解いていく主人公。
面白くて途中で本を閉じることが出来ず一気読み。
結局、それは「ヤラセ」ではなかったんだけどね。
では、どうやって?
それはもちろん読んでのお楽しみ!(ということで)
世界は「知っていること」と「知らないこと」の二つで構成されている。
「知っていること」というのは「今まで自分が関わってきたこと」
自分の今までの人生、生きてきた中で体験したもの…見たもの・触れたもの・感じたこと。
それらが「記憶」として頭の中に残っていく。
この「記憶」に関する話が、へぇ~!…と、とても面白かった。
そういえば、記憶力がイイ人というのは「何かと結び付けて暗記する」というのを以前テレビで見た。
あの時聞いたあの音楽。
あの時見たあの光景。
五感と日々の暮らし、出来事、それらが結びついてその人の頭の中に「記憶」として残っていく。
日々の生活の中で私たちはたくさんのことを頭の中に「記憶」として詰め込んでいってるんだな。無意識のうちに。
目で見たもの、嗅いだ匂い、その時流れていた音、そういったものがたくさん結びついて頭の中に蓄積されていく。
あ~、そういえば、ある曲を聴けばその曲をよく聞いていた当時の感情が胸の中に広がることってある!
頭の中のたくさんの過去の記憶を、さっと引き出すことが出来るのが三島玲央なんだろうな~。
私なんて
多分コレばっかり。
結局、本庄絆もクイズ番組のプロデューサーもそれぞれの目的があって、その“手段”としてクイズを利用していただけ。
三島玲央は純粋にクイズが面白くて好き、ということかな。
そしてもう一つの楽しい発見が「誰もが日常の中で何かしら選択をしている」ということ。
それは
だったり、
だったり。
些細なものから大きなものまでさまざまな事を日々選択している。
AかBか?その答えによってもしかしたら今後何かが変わってしまう…こともあるかもしれない。
毎日がクイズ。
全ての人がクイズプレーヤー。
その人それぞれの記憶の引き出しを開けながらその答えを選んでるのかも。
その選択は…。正解か、誤答か。