衝撃的な映画でした。
とにかくビジュアルがスゴイ。
自分や自分のまわりにいる人やモノ、コトと違うと、無意識のうちに境界線を引いてしまう。
相手の事を何ひとつ知らないのに。
あらすじ
税関職員のティーナは、違法なものを持ち込む人を嗅ぎ分ける特殊な能力を持っていた。
ある日、彼女は勤務中に怪しい旅行者ヴォーレと出会うが何も証拠が出ず入国審査を通過してしまう。
彼を見て本能的に何かを感じ取ったティーナ。
後日彼を自宅に招き、離れの住まいを宿泊先として提供する。
ティーナは次第にヴォーレに惹かれていくが、彼にはティーナの出生にもかかわる大きな秘密があった。
【公式サイトより引用】
スタッフ・キャスト
2018年製作
スウェーデン・デンマーク合作
原題:Grans
配給:キノフィルムズ
監督 | アリ・アッバシ |
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原作 | ヨン・アイビデ・リンドクビスト |
脚本 | アリ・アッバシ ヨン・アイビデ・リンドクビスト イサベラ・エクルーフ |
ティーナ | エヴァ・メランデル |
ヴォーレ | エーロ・ミロノフ |

感想
はじめに。
ネタバレあり。
今回の映画は、全くネタバレ無しで感想を書くのが難しいです。
というわけで、映画を鑑賞した後で…またはネタバレOKの方のみお読みください。
ボーダー。境界線。
私と違う。
みんなと違う。
普通じゃない。
普通とか普通じゃないとか、誰がどこで線引きをするのか。
性別、国籍、出自、顔の美醜、お金持ちと貧乏、頭が良い悪い…
「普通」って何なのか。
多くの人がしている(持っている)こと(もの)が「普通」だとしても、「普通」は絶対ではないし正しいわけでもないはずなのに。
この映画、ビジュアルが本当に衝撃的でした。
主人公のテイーナ、そしてヴォーレの容姿、匂いを嗅ぐ、狼のようにうなる…全てが野生的で、人間というより野生動物を見ているよう。
って、人間ではなかったのですが。
トロールと言えば、昔流行りましたよね「トロール人形」
逆立った髪をなでると幸運になるとか言ってたアレ。←トイストーリーにも出てた。
他には「ハリーポッター」にも出てました。
こちらは大きくて、でもあまり賢くない…ハーマイオニーがトイレで襲われかけたあの巨人です。
トロールだと言われれば、あの容姿も虫も爪の中が黒いのも納得がいくような。
ティーナも自分のことを最初から知っていれば、周りの人と違うことで子供のころから辛く寂しい思いをすることもなかったのかもしれないのに。
でも、それはトロールだけが暮らす世界で生活していればの話ですが。
自分がトロールと知っていたヴォーレは、トロールだった為に人間の世界で辛く苦しい日々を過ごしていたわけだから。
何となくヴォーレが気になり始めたテイーナが、ミニのワンピースを着てる姿が可愛くて、
と、思っていたのにあの森の中でのシーンで絶句。
「本作には各国の映画祭で「ショッキング過ぎる」と話題になったシーンがあったが、製作者の意向を汲み修正は一切無し、ノーカット完全版での日本公開を決定」
これは、公式ページに書いてあった文章だけど、おそらくこの森の中のシーンのこと。
確かにかなり衝撃的なシーンではあったけど、ここをカットしたらダメなのでは?
「違う」ということがわかるすごく重要なシーンなのに。
このシーンがあるのとないのとでは全然違ってきますよね。
結局、今いる世界(人間の世界)に馴染もうとしていただけにティーナの気持ちも複雑なものがあって切なかった。
話が進んでいくとティーナの容姿も行動もあまり気にならなくなってきて、ティーナの
優しい心。
純粋な心。
に触れ、愛らしくも思えてくるのです。
私は、私の中に無意識のうちにボーダーを作っていないか?
勝手に決めつけてないか。
知ろうとしていないのではないか。
何も知らないのに自分から遠ざけていやしないか。
と、問いかけてみました。
そして。
まだまだ「私の知らない世界」はこの世にたくさんあるのだろう。
目に見えるものだけが全てではないのかも。
私が気付かないだけで、この世には妖精やトロールや、日本人だったら馴染みのある妖怪なんかもいっぱいいるのかもね。
…なんてことを思わせるファンタジー映画でもありました。
2018年カンヌ国際映画祭では、ある視点部門 最優秀作品賞。
2019年アカデミー賞では、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート。
ティーナとヴォーレ役の俳優さんの写真を見て「え?!」と驚くくらい特殊メイクのすごさに感心しました。
いや、ヴォーレはどことなーく面影あったのですがティーナはもぅ全然。すごい!