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映画

「コーダ あいのうた」感想~無音の中で感じる歌声。音のない世界で暮らすということ。

希望、愛情、嬉しい気持ち、優しい気持ち…何かそういうのが私の中でごちゃ混ぜのてんこ盛りになって泣けました。

派手に宣伝されてたわけではなくて何となく観た映画でしたがすごく良かった。

観て良かった~。

…とか言ってたらアカデミー賞受賞しちゃいましたよ。スバラシイ!!

あらすじ

漁をして暮らす両親と兄、そして高校生のルビー。

両親と兄は耳が聞こえない。家族の中で一人だけ耳が聞こえるルビーは家族の耳となり口となり毎朝家族と共に船に乗り漁を手伝い、そして学校へと通っていた。

家族には打ち明けていたなかったけれど、歌が好きなルビーは合唱クラブへ入部する。

合唱クラブにはルビーが秘かに思いを寄せるマイルズも入部していた。

シャイで人前で歌うことも最初は出来ずにいたルビーだったが、顧問の音楽教師はルビーの才能に気づき都会の名門音楽大学への受験を強く勧める。

しかし、両親は家業の方が大事!と進学に反対。

家族を置いて家を出ることもためらわれ、ルビーは夢を諦め家業を手伝うことを決意するのだが…。

スタッフ・キャスト

・2021年製作/アメリカ・フランス・カナダ合作
・原題:CODA
・配給:ギャガ

監督 シアン・ヘダー
脚本 シアン・ヘダー
オリジナル脚本 ビクトリア・ベドス
スタニスラス・カレ・ド・マルベルグ
エリック・ラルティゴ、トーマス・ビデガン
ルビー・ロッシ エミリア・ジョーンズ
フランク・ロッシ トロイ・コッツァー
ジャッキー・ロッシ マーリー・マトリン
レオ・ロッシ ダニエル・デュラント
マイルズ フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
V先生 エウヘニオ・デルベス
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感想

「コーダ」というタイトル。

最初、音楽記号の「コーダ」かと思っていたら違ってました。

「Children of Deaf Adults」の頭文字をとったもの…❝聞こえない親がいる、聞こえる子供❞のことを言うそうです。

これと言って問題の無いような、親のサポートをしたり…とかそんな感じ?と簡単に想像していましたが実際にはそうではないようで。

「聞こえない世界」と深く関わりつつも自身は「聞こえる世界」にいる、どちらも理解しどちらにも属しているような属していないような。

そんな複雑な思いがあるようです。

検索していく中で「コーダ」を主人公にした小説を見つけました。

気になるので読んでみようと思ってます。

で、映画の感想ですが、

良い家族なんです。とっても。

家族仲良く、みんなで助け合って。

でも、それぞれの気持ちもすごくよくわかる。

毎日3時に起きて船に乗り漁の手伝いをしてから学校へ行くルビー。

両親のことは大好きだけど「変わった家族」とクラスメイトに言われバカにされ、実際目立ってしまう両親を恥ずかしく思うこともあったはず。

好きな男の子がいればなおのこと。

両親と兄は耳が聞こえないけれど、それぞれが何かしら音を立てて賑やかで音だらけの生活をしているのも意外で面白かった。

何もしゃべってないのに家族のおしゃべりなこと!

手話が本当に感情豊かで、まくし立てるように話す母親の声が聞こえてくるかのようでした。

一人イヤホンをして音楽を聴くのはダメだけど、みんなでスマホの出会い系サイトの女の子を見るのはオッケー。

みんなで楽しいことを共有したいお母さんルール。

ホントならこっそり隠れて…の性のあれこれも純粋に大切な愛情表現なんですよね。

いや、でも17歳の女子高生にはやっぱり恥ずかしいと思うけど。

 

自分が家族から頼りにされているのはわかってる。

自分がいなくなったらどうなるんだろう。

夢を追うことはワガママか?

自分の人生だ!と自由に生きることは家族を捨てること?

17歳には重く重くのしかかる。

いつからこんな風になってしまったのか、ルビーが生まれるまでは3人で生活できていたはずなのに。

いつの間にかルビーに頼りきってる両親と、そのことに苛立つ兄。

お兄ちゃん、ぶっきらぼうだけど妹の事を心配してくれてるんだよね。

「オレたちは無力じゃない」

「家族の犠牲になるな」

家族の絆は良くも悪くも切りたくても切れないのです。

周りの人とのパイプ役をしてくれる頼りになる、お金がかからない、ラク…自分の子供だから。

人を雇う余裕がないのだから金銭的な面でもルビーは必要とされてたはず。

愛情いっぱいに育てられたルビーだから、いっぱい思うことはあるけれど最終的には夢を諦めるという答えを出すのも…そうだよなぁ、て感じ。

こういうのって自分からはなかなか逃げ出せない。放り出せない。

だからこそ周りが気付いてあげることが大事なんだろうな。

最後はルビーも家族も少したくましくなったように感じました。

漁師の組合の中で最初は会話にも入れず疎外感を感じてた母親も、次第にみんなと笑いあってた。

そう、自分が変われば周りも変わってくるはず。

きっと大丈夫!!

 

音のない世界。

「何にも聞こえないんだよね」と頭では理解して想像出来てたつもりだったけど、コンサートの無音のシーンは衝撃的でした。

こんなに??

こんなに全く何も聞こえないんだ、という驚き。

 

この映画の中で歌のシーンはどれも素晴らしくてイイんです。

シャイなルビーがみんなの前では歌えずに一人、湖のそばで歌う「ハッピーバースディ」

耳の聞こえない家族と乗る船の上で思い切り歌う姿。

歌う娘の喉に手を当てて歌声を感じる父親。

音楽大学への受験の会場で家族に向かって手話をしながら歌う姿。

このシーンではもう私、ぐちゃぐちゃに泣いてました。

合唱クラブ顧問の先生も偏屈だけど優しくて厳しくてカッコよかったですね。

あたたかい気持ちや優しい気持ちでいっぱいになる素敵な映画でした。