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映画

「イニシェリン島の精霊」感想~こじれた関係、大人の友情が壊れた時。

人間関係ってムズカシイ。

こじれちゃうとムズカシイ。

大人になると口に出して言わないこともたくさんあるのでもっとムズカシイ。

小さく狭い社会の中での人間関係は更に面倒くさくてヤヤコシイ。

あらすじ

1923年、アイルランド西海岸沖のイニシェリン島。

海を隔てた向こうに見える本土では内戦の激しい爆撃音が聞こえてくるが、このイニシェリン島はのどかで退屈なくらい平和だった。

この島で妹と暮らす素朴で穏やかな男・パードリックは親友のコルムからある日突然絶交を告げられる。

心当たりも無く何が何だかわからないパードリックは困惑しながらも、また以前のような関係に戻りたいと必死にコルムに接近する。

しかし、頑なにパードリックを拒否するコルム。

家に、バーにとやって来るパードリックに「今度俺に話しかけたら(自分の)指を切り落とす!」

と、恐ろしい宣言をしてパードリックを突き放した。

それでもパードリックは、賢い妹のシボーンや若いドミニクに相談しながら壊れた“友情”を修復しようとするのだった。

スタッフ・キャスト

2022年製作・イギリス
原題:The Banshees of Inisherin
配給:ディスニー

監督 マーティン・マクドナー
脚本 マーティン・マクドナー
パードリック・スーラウォーン コリン・ファレル
コルム・ドハティ ブレンダン・グリーソン
シボーン・スーラウォーン ケリー・コンドン
ドミニク・キアニー バリー・コーガン
ピーダー・キアリー ゲイリー・ライドン
ジョンジョ パット・ショート
ジェリー ジョン・ケニー
ミセス・マコーミック シーラ・フリットン
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感想

シボーンが「寒々しい風景」と言ってたけど、この景色がイイ。

ぐるーっと見渡しても何もないただ広い土地。

青々とした草木もカラフルな花も無い。

石造りの家。古びたマリア像。

切り立った崖。

殺風景でむき出しの自然。

でも、この自然と共にここで暮らす動物たちがとても綺麗に丁寧に撮られてた。

どの動物たちもやたら可愛い。

真っ赤な夕陽とヤギ、牛、水鳥。

外から家の中を覗いてる馬。

ぴょんぴょん跳びはねてるカラス。

普段ならカラスって不気味で怖いイメージにされちゃうのに

YOU
YOU
可愛く撮ってもらって良かったね~

そして、バーへ行くパードリックの後をちょこちょことついて歩くロバのジェニー。

赤いリボンを付けた黒いロバのジェニー。

可愛いのよ、この子がホントに。

 

ストーリーとしては、小さな島とか村とか田舎にありがちな面倒くささを感じた。

狭い社会の中での人間関係のわずらわしさというか。

濃くて狭い人間関係。

人の噂が娯楽のような何もない島←これはシボーンの方が嫌になってたけど。

 

パードリックとコルムも“親友”じゃなかったらこんなことにはならなかったのに。

バーで、教会で、会った時にただ挨拶して何でもない話をちょっとするだけの関係だったら。

単純に「合わない」…ただそれだけのこと。

合わない人と一緒にいるのはしんどい。

話が合わない人とのおしゃべりは正直苦痛だし、時間のムダとさえ思う。

合う人合わない人、話してて楽しい人楽しくない人、っていうのは人それぞれにあるからね。

コルムの部屋を見てもわかるけど芸術を愛する音楽家のコルム。

そりゃ、ウン〇の話を2時間もしちゃダメでしょうよ。

この「わかってくれない」「空気読めない」「考えがそこに及ばない」感じもちょっとイヤになった原因かもね。

2人とも全然悪い人ではなくて、どちらかと言えばいい人だし優しい人でもあったから関係も感情もこじれてごちゃごちゃなっていく様が見ててしんどかった。

年を取るとふと自分の残りの時間を考えてしまう時がある。

自分に残された時間。

多分人生折り返したあたりからふとそんなことを考えてしまうものなのかも。

自分はこの先どう生きていくか?この先何をするべきか?を真面目に考えると思う←私も考えることあるよ。

で、「こんなことをしてる場合じゃない」と思っちゃったんでしょうね、コルム。

ただいきなり過ぎたのかもしれん。

ちょっとくらい説明してあげて。

そりゃ、パードリックも何が何やらわかんなくて戸惑うわ!

でも、説明したところで理解してくれるか納得してくれるか…というのも怪しい。

(あ、そういえば説明してたね、パードリック全然納得いってなかったけど。)

無口な性格もあってあの突然の宣言になった、てことなんでしょうかねぇ~。

シボーンは賢いから、コルムはまずシボーンに自分の気持ちを話してシボーンからパードリックに説明してもらったらよかったのに。

直接コルムからだと感情的になりそうなので、やっぱりここはシボーンからパードリックにわかるように丁寧に話をすれば…。

絶縁じゃなくてまだ何かしら別のいい案があったかも。

 

突っぱねるコルムと納得がいかないパードリック。

コルムが他の誰かとおしゃべりしてるのも楽しそうにしてるのも、少し離れたところから見てる。

気にしていつもチラチラ見てる。

思うよね、なんで?って。

だってコルムの事が好きだから。

友達じゃん、毎日一緒にバーで飲んでたじゃん、って思うよね。

このパードリックの悲しい気持ちもめちゃめちゃわかる。

でも、ダメって言われたのにグイグイ踏み込んで行くパードリック。

YOU
YOU
そういうとこがダメなんだって!

映画を観てるこっち側の私は、コルムもパードリックも両方見えてるからすごくしんどくなった。気持ち的に。

じゃ、シボーンのように島から出て行けばいい…けど、それもムズカシイ。

何故ならコルムは年を取っているから。

あの年で新しい環境でまた一から始めるのはちょっとしんどい。

出来なくはないけど、それなりにパワーがいるしね。

何も無いけどこのイニシェリン島で音楽と犬と一緒に穏やかに残りの人生を過ごしていきたかったんだろうなぁ。

 

ラストは“終わりにしたいコルム”と“終わりに出来ないパードリック”

「好き」の気持ちが強ければ強いほど、気持ちがこじれた時に「嫌い」「憎い」の気持ちも強くなってしまう。

あ~~もぅ、シボーン帰ってきてーー!!

仲介役を~~!!

 

余談ですがもう2つ言いたい。

ドミニクが

こんな棒見つけちゃったよ~!いったい何に使うんだろ?何か引っかけたりするのかなぁ~?

なんて嬉しそうにしゃべってたけど結局自分がひっかけられてたじゃん。

YOU
YOU
あ~、ドミニクぅ~

もう一つは死神みたいなマコーミック。

ホント死神みたいだったけど【マコーミック】って調味料のCMあったよね。

…なんて映画を観ながら頭の中では♪マコーミック♪♪のメロディー?が流れた。