認知症の母親を実の娘が撮ったドキュメンタリー映画。と聞いて
「オレは行かん。絶対行かん。現実だけで十分だ。」
と、旦那が一緒に行くのを激しく拒否ったので一人で行ってきました。
あらすじ
認知症の87歳の母とその介護をする95歳の父。
広島県呉市に二人で住む両親の姿をテレビディレクターである娘が撮影したドキュメンタリー映画。
監督の両親は広島で二人暮らし。
帰省した時に感じた母の言動の違和感と「母は物忘れが多くなった」という父の言葉。
母親を病院に連れていくと認知症であることがわかった。
その後、帰省するたびに少しずつ少しずつ変わっていく母親。
大変な日もあり、笑える日もあり…。
認知症、離れて暮らす年老いた両親、老々介護。
何とかなること、ならないこと。
変わっていったこと、変わらないこと。
変化を受け入れながら日々暮らしていく。
【公式サイトより】
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【こちらは書籍です】
スタッフ
2018年製作 日本
配給:ネツゲン
監督 | 信友直子 |
---|---|
撮影 | 信友直子 |
感想
誰にでも起こりうる非常に身近な問題。
実際、私の両親も80代なので、いつこの映画と同じ事が起こってもおかしくないのです。
老々介護、認知症…辛い内容だけど、どこか温かみが感じられるのは撮影しているのが娘だからでしょうか?
語りも監督ご自身でされていましたが、次第に症状がひどくなっていく母の様子を淡々と語りながらも「母と娘」「家族」という繋がりや愛情を感じました。
カメラを持ちながら声をかけ、父や母もカメラを持つ娘に返事をし、話しかける。
時にはカメラを置いてそばに行く。
監督であり娘であり…そういうところが、辛いだけのドキュメンタリーではなくどこか温かみのある映画に感じたのだと思います。
認知症の症状がひどくなっていく母親が、時に突拍子もない行動に出たり言葉を発したり。
そんな時に「何やってんのよー」と笑える時もある。ということ。
辛い事大変な事、たくさんあると思うけどそればかりではない。
家族で笑えることもあった。
反対に、親の態度や言動に娘としてイラっとさせられることもあった。
そんな家族の感情がカメラを通して感じることのできるドキュメンタリー映画でした。
とはいえ、やはり認知症の親が少しずつ変わっていく姿を見るのは辛い。
母親も自分自身の変化に戸惑い悩む。
「長生きすると迷惑をかける」
という言葉が悲しく心の中に残りました。
時折、映画館の中でくすくすと笑いがおこったのはチャーミングな95歳のお父さんの場面。
ちぐはぐな聞き間違い。
大きな声で歌う姿。
慣れない家事もどことなく楽しそうな…。
不平不満を言う事もなく全てを「これも定め」と受け止める姿は尊敬します。
私も見習いたい。
でも、95歳のお父さんが両手にスーパーの買い物袋を持ち、少しずつ休憩しながら家に帰る姿は見ていられなかった。
子供が家を出て老夫婦2人の生活ってこういうことなのでしょうか。
高齢の夫婦二人暮らし。もしくは高齢者の一人暮らし。
きっと私たち夫婦もそうなっていくのだと思うし、これから更に増えていくのでしょう。
ラスト、並んで歩く父と母の映像。
家のそばの同じ道を歩いている現在の父と母の姿と数十年前の父と母の姿。
夫婦の歴史を感じるシーンでした。
なぜか泣けて泣けてしかたがなかったシーンでした。
実の両親のドキュメンタリー映画。
認知症になってしまった母親。
95歳の耳の遠い父親。
家の中のこと、家族のことをカメラにおさめるのは葛藤があったと思いますがこの映画を作っていただいたことに感謝したいです。
この映画を観ることが出来て良かった。