まず。キャスティングがいい。
現役高校生たちの中に刺客のように紛れ込むニセ高校生たち。
前田敦子、太賀(仲野太賀)、岩田剛典、高畑充希。
制服似合ってるけどね。
面白おかしく描かれてるけど、結構大きなモンダイを投げかけてます。
あらすじ
地味で目立たない高校生 町田一(はじめ)。
一見、真面目で優等生に見えるメガネ男子だが、実際は勉強もダメ、運動も全くダメ。
そんな彼の唯一、誰よりもとび抜けている事は「人が大好き」ということ。
いつも他人の事ばかり考えて行動する超絶イイ人だった。
そんなある日、クラスメイト 猪原奈々の「人が嫌い」という言葉に衝撃を受ける。
猪原さんの言葉や行動が全く理解できず悩む町田くん。
戸惑いながらも猪原さんのことが気になる町田くんだったが、次第に今までに感じたことのなかった❝わからない感情❞が芽生え始める。
スタッフ・キャスト
2019年製作 日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督 | 石井裕也 |
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原作 | 安藤ゆき |
脚本 | 石井裕也 片岡翔 |
町田一 | 細田佳央太 |
猪原奈々 | 関水渚 |
氷室雄 | 岩田剛典 |
高嶋さくら | 高畑充希 |
栄りら | 前田敦子 |
西野亮太 | 太賀 |
吉高洋平 | 池松壮亮 |
吉高葵 | 戸田恵梨香 |
日野 | 佐藤浩市 |
町田あゆた | 北村有起哉 |
町田百香 | 松嶋菜々子 |

感想
町田くん、イイ人だ。
超絶イイ人だ。
ただ、町田くんを好きになると…しんどいだろうなぁ。
きっと穏やかに毎日を過ごすことが出来ないだろうなぁ。
猪原さんの混乱する気持ちがよーーーーくわかる。
誰だって好きな人からは一番で特別な存在でありたいじゃないですか。
なんて、口には出さないけど心の中ではちょっぴりワガママなことを思ったりするわけじゃないですか。
それなのに町田くんにとっては誰もかれもが「大切な人」で、
どの女の子(だけじゃないけど)にも優しく「頭ぽんぽん」して、
元気なく落ち込んでる女の子(だけじゃないけど)にミルクティーをそっと渡す。
モヤモヤイライラして「私の事はどーなのよ?」と聞けば
「大切な人。そうでない理由がひとつもない」
なんてことを、まっすぐ目を見て真顔で言うわけですから。
そりゃもぅ
って、動物園のクマみたいに落ち着きなくウロウロしちゃいますよ。
この映画、主役の二人はオーディションで選ばれた新人だけど、彼らの周りを囲んでいるのはとっても豪華な面々。
松嶋菜々子、佐藤浩市、戸田恵梨香、前田敦子、高畑充希、池松壮亮、太賀(仲野太賀)…。
土屋アンナは後ろ姿ばっかりで、顔が映ったのはほんの少しだけだったりと、贅沢なキャスティング。
ちょっと気になったのは、人気者氷室君の同級生。
これまた高校生には見えない男性が隣にいませんでしたか。
どなただったのでしょう。気になります。
おもしろいシーンは多々あって、前田敦子演じる栄さんのシーンは全て好き。
でも、一番は吉高と町田くんの掛け合いのシーン!
ここ、むちゃくちゃで「何やってんの!」と笑えます。
池松壮亮演じる吉高が抱える悩みは、何となくわかる。
やりたいことを仕事にしているわけではない。
でも、家族を養っていかなくてはいけない。
大切な人の為に、嫌なことをするのは仕方がないの事なのか。
大切な人を守るために、他の誰かを傷つけて不幸にしてもいいのか?
考えても全然答えは出ないし、「そんなもんだよ」という言葉にも何だか納得できない。
藁にもすがる思いで町田くんに思わず話しかけてしまう吉高の気持ち…よーくわかります。
町田くんは吉高が無くしてしまった(無くしてはいないけど心の奥のどこかにおさめてしまった)ものをたくさん持っていたんだろうな、と思う。
結局、吉高の出した答えは。
全て自分の思い通りになんていかない。
どこかで折り合いを付けながらそれでも気持ちは諦めない。
この先どうなるか、なんてわかんないけど少しずつでもとりあえず進んでみよう。ということなのかな。
町田くんと話しながら気分が高まってワケわかんなくなってるとことか、
飛んでる町田くんに手を振りながら追いかけるとことか、
町田くんに対して興奮気味の吉高さんがカワイイ(笑
この「町田くんの世界」原作はマンガです。
原作の町田くんと映画の町田くん。ちょっぴり雰囲気が違う気がします。
どちらも優しくて超絶イイ人なんだけど、原作の町田くんの方がよく考えてよく気が付いてる。
映画の町田くんの方が天然度(かなり)高めです。
個人的には映画の町田くんの方が好きかな。
でも、原作マンガもすごく良かったのでおススメです。
お父さんやお母さんのなれそめ話や、お母さんの妹の話もとっても良いです。
何だかほっこりと幸せな気分にさせてくれるストーリーなんですよね。
町田くんの初恋。
誰かの事を好きになる。
家族が好き。友達が好き。みんなが好き。…それのもっとすごいヤツ。
最終的に、猪原さんと両想いになって良かった良かった!…のハッピーエンド。
にも思えるけど、町田くんの戸惑いとそのことに気づいてる猪原さん。
猪原さんが好きで好きで、猪原さんのことで頭がいっぱい。
でも、そのせいでバスの中で立っていた妊婦さんに気づかなかった町田くん。
恋する町田くんよ、それはごくごく普通のことなんだよ。
好きな人のことで頭も心もいっぱいになっちゃうのって。
…でも。
そこにはキリストの町田くんはいない。
ごく普通の恋する男子高校生の町田くんなのです。
多分親としても「普通の恋する男子高校生」であって欲しいと思うよね。
でも。でもでも。
「世の中」の為には、何だかすごく貴重な人を失ってしまったような気が。
何だかスッキリしない気持ちも少々残るような。
大切なのは「想像すること」
困ってるかな、嫌な思いしてないかな、悲しくないかな、喜んでくれるかな。
自分の言葉。行動。
ほんの少し想像してみるといい。
町田くんと同じことするのは無理だけど、ちょっとだけ「町田くん」になる。
「想像すること」は「思いやること」
そうすることで優しさがあふれる世の中になっていくんじゃないだろうか。
きっと、それが町田くんが見ている世界…町田くんの世界なんじゃないだろうか。
みんなにその気持ちが少しずつでもあれば、町田くんをキリストにしないですむ。
町田くんもシアワセ。
みんなもシアワセ。
世の中もシアワセ。
めでたしめでたしだな、きっと。
最後に。
この映画の主題歌、平井堅の「いてもたっても」
これがまたいい曲なの~!!
映画版MVというものがありました。
なんだろうね。
幸せな気持ちというか優しい気持ちでいっぱいになって聴いてると泣けてきちゃう。