しょっぱなから酷いいじめに残酷なシーン。
シワだらけで顔も服も汚れた村の人々。
笑顔も無く、白黒の映像が更に不気味さ増し増しでこれから始まる3時間がずっとこんな感じ…いや、もっと酷くなるんかぃ?
という気持ちで鑑賞スタートいたしました。
あらすじ
東欧のとある場所。
ホロコーストを逃れ、一人暮らしの叔母の家に疎開した少年。
ある日、叔母が病死、家も火事で全焼してしまう。
身寄りを無くした少年は、一人村を出ていく。
しかし、それは少年にとってつらく苦しい旅だった。
行く先々で、少年を異質な存在として見る周囲の人々。
彼らから酷い仕打ちを受けながらも生き延びようと必死にもがき続ける。
「生きて家に帰る」ために。
スタッフ・キャスト
2019年製作 チェコ・スロバキア・ウクライナ合作
原題:The Painted Bird
配給:トランスフォーマー
監督 | バーツラフ・マルホウル |
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原作 | イェジー・コシンスキ |
脚本 | バーツラフ・マルホウル |
少年 | ペトル・コトラール |
ミレル | ウド・キア |
レッフ | レフ・ディブリク |
ルドミラ | イトゥカ・ツバンツァロバー |
ハンス | ステラン・スカルスガルド |
司祭 | ハーベイ・カイテル |
ガルボス | ジュリアン・サンズ |
ミートカ | バリー・ペッパー |

感想
主人公の少年が、拾われたり連れられて行った先々での辛い日々。
色んな人達のもとに転々とするわけですが、もぅどこもツライ…地獄めぐり。
一般的には「弱い」とされている年寄りや女性、子供たちだって攻撃できる相手がいると暴力をふるうし、ひどいことだって平気でするものなんですね。
目玉ってあんな風?
あんなにクリっと出来ちゃうものなんですか。
あの使用人の男性の方が若いんだから反撃できそうなのに何でくり抜かれちゃってんでしょう。
そして、
そりゃ、もう泣くしかないですよね。
と、ここはちょっと心の中でツッコミ入れつつ観てました。
そして、村の女たちの集団暴行。
想像するだけで恐ろしい。
見ていられない程の酷いことをしてしまう人間って本当に怖い。
やはり「人間」が一番残酷で恐ろしい生き物…って気がします。
略奪、戦争、暴力、憎悪、悪意…人々の感情と行動を少年は静かに、目をそらすことなく真っすぐに見つめます。
少年の視線、大人たちの顔に深く刻まれたシワが印象的な映画でした。
モノクロの画面が冷たくとがって、でも❝美しく❞もありました。
原題は「The Painted Bird」
色を塗られ空へと放たれた鳥は、仲間とは認められず攻撃されまくって死んでしまいます。
原題そのままのこんなシーンもありました。
その色は、肌の色?目の色?髪の色?
色を塗られていても中身は同じ鳥(人間)なのに。
やられてばかりだった少年も、ある時、自分より弱そうな人間を見つけて攻撃し物を奪います。
旅をする中で得たもの…子供がたった一人で生きていく為には仕方のないことだったのかもしれませんが、これを「仕方ない」と納得しようとしていることも何だか恐ろしいことです。
兵士が言った「目には目を」の言葉がふっと浮かんできました。
ラスト、ようやく父親の登場。
母親も生きているみたいで良かった。
でもきっとお父さんとお母さんも、毎日が死と隣り合わせだったのだろう…と、腕の数字を見て感じられます。
父を前にしてようやく❝子供❞としての感情が見えたことに安堵しました。
これからはきっと❝子供❞として、お父さんとお母さんに守られて生きていけるはず。
「マルタ」「オルガ」「ミレル」「ハンス」…少年が出会ってきた人々の名前が各章のタイトルとして出ていましたが、少年の名前は最後の最後に。
ようやく名前のある一人の人間として扱われたようで嬉しい。
結局、一度も笑顔になることはなく、ハッピーエンドのようなハッピーエンドとも言えないような。
何だかわかんないけど、単純に
という気持ちにはなれない映画でした。