原題は「For Sama」
❝サマ❞のために。
娘の❝サマ❞が生まれた時のこと。
サマが暮らしていた場所、
周りにいた人々、
そこでどんなことがあったのか、
何をしてきたのか。
…サマに伝えたい。
「For Sama」…良いタイトル。
あらすじ
ジャーナリストに憧れる学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始める。
内戦は激化の一途をたどり、独裁政権により美しかった都市は破壊されていく。
そんな中、ワアドは医師を目指すハムザと出会う。
彼は仲間たちと廃墟の中に病院を作り、日々繰り返される空爆の犠牲者の治療にあたっていた。
しかし、多くの人は血まみれの床の上で命を落としていく。
ワアドとハムザは夫婦となり、彼らの間には新しい命が誕生する。
その赤ん坊は、自由と平和の願いを込めてアラビア語で「空」を意味する「サマ」と名付けられた。
幸せもつかの間、政府側の攻撃は日増しに激しくなり、数棟あった病院は破壊され、ハムザの病院は街で最後の医療機関となる。
生と死が隣り合わせ…明日をも知れぬ身で母となったワアドは、家族や愛すべき人々の生きた証を映像として残すことを心に誓う。
全ては娘❝サマ❞のために。
【公式サイトより引用】
スタッフ・キャスト
2019年製作 イギリス・シリア合作
原題:For Sama
配給:トランスフォーマー
監督 | ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ |
---|---|
製作 | ワアド・アルカティーブ |
撮影 | ワアド・アルカティーブ |
出演 | ワアド・アルカティーブ |
サマ・アルカティーブ | |
ハムザ・アルカティーブ |

感想
シリア、アサド政権、空爆…ニュースで何度も耳にした言葉、目にした映像だったけど。
テレビの画面で見た爆撃の煙の下には、私たちと同じように家族や大切な誰かとの暮らしがあるということをいま一つ理解していなかったような気がする。
外で遊ぶ子供たち。
家族のために食事の支度をする母親。
そんな人々が暮らす街が戦場となっている恐ろしさ。
映像は、全てを隠すことなく見たままの5年間が映し出される。
爆撃で亡くなったたくさんの人。
拷問を受けて殺されたたくさんの人。
どこもかしこも血だらけの病院。
運び込まれる犠牲者が多すぎて床に寝かせるしかない病院。
大量の血を流しながら引きずられる男性。
爆撃で片腕が無くなってしまった男の子。
お腹の中にいた頃から聞いていたせいか、大きな爆撃の音にも驚かず泣くことも無い赤ちゃんのサマ。
毎日砲弾が落ち、家の壁が崩れ砂ぼこりと煙が舞う中で子育てをするワアド。
一瞬、これは本当に現代の話なのか?と思ってしまう。
むかーし戦争だったころの映像ではなくて、今、この地球のどこかで「今」「現在」起きていることなのか、と。
ふかふかのイスに座ってカフェオレを飲みながら、スクリーンでこの映像を見てる私って。
こんな中でも、人々は時に明るく、ふざけて笑いあう。
幸せそうな結婚式の様子を見るとこちらまで嬉しくなった。
だけど、子供たちが血を流したり、死んでしまう映像はつらすぎて胸が痛くなる。
爆撃で子供を亡くした母親が、カメラを回すワアドに向かって
「全部撮って!!」
と泣き叫ぶ。
母親の悲しみと怒り。
こんな小さな子供が殺される…なんで?! この子は何もしていないのに。
3人兄弟の一番末の弟が爆撃を受けて病院に運び込まれた。
お兄ちゃんは「外にいただけなのに」と、亡くなってしまった小さな弟を見つめる。
こんなことがあっていいのか?
戦争で真っ先に辛い目にあうのはいつも弱い人達。子供や女性。
戦争ほど愚かでくだらないものは無い。
何があっても、どんな理由でも絶対に絶対にやってはいけないこと。
これだけは断言したい。
「日本は平和ボケしてるから戦争も必要」とか、
「時には(場合によっては)武器を持ち戦うことが必要」という人がいる。
なにバカなこと言ってんだろう。
今、もしも戦争が起こったらつらい目にあうのは私やあなたの子供たちだよ?孫たちだよ?
戦争は、
弱いものが真っ先に傷つく。
小さな子供たちは理不尽に命を奪われる。
病院を標的にして爆撃するという卑怯なことを平気でする。
残酷で、今すぐにでもこの世から無くしたい。
母親として、無抵抗な子供たちが怪我をして血を流したり亡くなったりする映像は恐怖よりも怒りを感じる。
彼らの夢や希望や未来を一瞬で奪ってしまった戦争。
やっぱり、こんなものは絶対にいらない。
この映画を観て以来、テレビのニュースで流れる内戦や難民という言葉に敏感になった。
「知る」という事の大切さ、「感じる」ということの大切さ。
そこから生まれる「力」がたくさん集まったら…少しずつでも変えていくことが出来ないのだろうか?
サマの見る空が、きれいに広がる青空でありますように。