2021年6月9日で配信終了したサンクス・シアター。
私が選ぶことが出来たのは8作品。
かなりギリギリになって観始めたのですが、
全作品、観てみたかったです。
ミニシアターエイド基金とは
新型コロナウィルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令され、外出自粛、時短営業、休業などによって閉館の危機にさらされている全国の小規模映画館(ミニシアター)を守るため、映画監督の深田晃司さん、濱口竜介さんが発起人となって有志の皆さんで立ち上げられたプロジェクトです。
プロジェクトは2020年5月15日に終了しましたが、この日までに29,926人もの人々が支援し、331,025,487円という目標金額100,000,000円を大きく上回る金額を達成しました。(クラウドファンディングプラットフォーム MOTION GALLERYより)
このクラウドファンディングのリターン(の一つ)として「サンクス・シアター」がありました。
活動に賛同した有志の方々から寄せられた100以上の映画から、好きな作品を規定本数分選び、ストリーミング配信で期間内(配信開始してから1年間)何度でも観ることが出来る、というものでした。
かなりレアな作品もあり、どれを観ようか選ぶのも楽しみの一つではありましたが、正直、もっともっと観たかった!!
もっとばーんと支援しとけば本数も…と、あとから悔やみましたがいまさら言っても仕方ありません。
今回私が観ることのできた8作品の感想をまとめてみました。

カメラを止めるな!リモート大作戦!【特典映像】
監督:上田慎一郎
キャスト:濱津貴之、真魚、しゅはまはるみ他
2020年製作/51分
「カメラを止めるな!リモート大作戦!」は、YouTube配信されています。
観終わった時に笑顔になるような、元気が出るような、そんな作品。
そして、この特典映像で更に楽しさ倍増に!
本編の「リモ止め!」は30分もなかったのにこちらは51分。
リモートで作るという特殊な映画ではありましたが、その映画(本編)の見どころやメイキングなどが盛りだくさん。
と、映画作りを少し覗けて楽しかったです。
この作品に関しては別に記事を書いているのでこちらをどうぞ。
22/3ドーナッツ
監督:柄本佑
キャスト:本山彦次郎、松本夢子、加藤一浩ほか
2009年製作/3分
わずか3分というとっても短い作品。
どんな話かな~。と見てるうちに終わってしまいました。
同じ時間、同じ場所にいる人達だけど仕事だ恋だ、とそれぞれに色んな(ちょっとした)問題に直面してたりしてなかったり。
そして、息子が作った映画に出演するのは母親として嬉しいものではなかろうか?とか考えました。
豆大福ものがたり
監督:沖田修一
キャスト:菊池亜希子、黒田大輔、瑛蓮ほか
2013年製作/30分
おやつの大統領を決める選挙のお話。
ゆるっとしつつもリアルな演説。
あの言い方がやけに頭に残ります。
と、プラカード持って詰め寄る主婦も好き。
ショートケーキは女優をお持ち帰りしたんじゃなくて、お持ち帰りされてましたね。
豆大福にタバコ吸わせたり、白塗りの雑さとか和菓子屋のおっちゃんの肌着の着古したヨロヨレ感とかも好き。
そして、ラストの豆大福柄のワンピを着た菊池亜希子と肌着の志賀 廣太郎のダンスがとってもカワイイ。
これまたゆるっとしたダンスなんだけど楽しそうに踊ってるのです。
ラストにキャストみんな出てきてダンスするのっていいですよね。
リモ止めもそうだったけど、見てるこっちまでほっこりと笑顔になります。
豆大福大統領になったり、マカロン大統領になったり。
ちなみに私は豆大福に一票。
旦那はきっとせんべいに一票だな。
で、「すあま」って何?どこに行けば買えるの?
この映画を観てすぐに検索してみました。
Starting Position
監督:片渕須直
キャスト:片渕須直、浦谷千恵
2020年製作/62分
Our Next Work
監督:片渕須直
キャスト:片渕須直、ほか「マイマイ新子」メインスタッフ
2007年製作/5分
2作品とも片渕監督の作品作りの様子を撮影した作品です。
アニメ作品というと絵を描くところを真っ先に想像してしまうけど、もっともっと前の段階からの映像。
原作があるからって、まんまそのとおりに作っていくわけじゃない。
まずは何もないところからスタートするんですね。
実際に起きたこと、時代、土地…の作品だと、朝ごはんのメニューひとつをとっても調べなくてはいけない。
「すべてが調べ物でできている」
って。すごい時間をかけて作っていくんだな、という事を知りました。
そして、町並み、足元に咲いているタンポポ、川辺にいるアオサギ。
カメラにおさめていくもの一つ一つが映画の中のシーンで見たものばかり。
このタンポポは、すずが絵を描いていた時の?
あのアオサギは舟でおつかいに行った時にいたよね。
鉛筆で描かれた細かくてリアルなイラスト。
鉛筆で描いてるんですよ。
うちの家にも転がってそうな普通のエンピツで。
下書き風で簡単な線のみで描かれた人物も、ササっと描いているように見えるのにすごく動きが感じられるんです。
すごいなぁ~。すごいなぁ~。
と、バカみたいに「すごいなー」しか出てこなかったけれど、メイキングって見ること・知ることが出来なかった部分を目にすることが出来て楽しい。
そして、今まで知らなかった「すごさ」「大変さ」そして「楽しさ」を見てるこちら側も少し感じることが出来ますね。
花子
監督:佐藤真
キャスト:今村花子、今村智左ほか
2001年製作/60分
はたから見ると「大変そう」と思うけれど、
ずっとこうだったから、周りが言うほど❝大変❞ではない。という母親。
どこか不思議なご家族でした。
私には「アート」とは思えないものを「アート」だと毎日嬉しそうに写真を撮る母親。
台所で泣きわめく花子の相手をする母親、2階の部屋で趣味の三味線を弾いている父親。
私は風になる、という3歳年上の姉。
花子が施設にいる間、テニスを楽しむ母親。
主婦のみんなでおしゃべり。←排水溝のゴミ取りネットの話(笑
特に母親に対して、自分の要求を押し通す(母親が根負けしちゃうからかな?)花子に「もぉ~やだぁ、恥ずかしかったじゃない」と、どこかほわんとした雰囲気の母親。
大変ではない、というけれどやっぱり大変では?と思ってしまう。
だけど、あまりそれを感じさせないし、家族それぞれが❝自由❞にも見えるのです。
「面白がる」ってとても大事なことなんだと思う。
この映画が撮られたのは2001年。
今、花子は40代。現在の家族の様子も気になります。
家族の皆さんは変わらず元気にお過ごしでしょうか。
尊く厳かな死
監督:中川駿
キャスト:イワゴウサトシ、松﨑映子、中野健治
2015年製作/60分
リアルすぎる話。
俳優さんの演技がとても自然。
全く他人ごとではなく、いつ同じことが起きてもおかしくない内容。
にしても、医師は本当にあんな言い方をするのかな。
あんな言い方をされて「お願いします」とは言えない。
そして、尊厳死は安楽死とは違う、というのは何となく理解していたつもりだけど。
装置を外すと、ロウソクの灯が消えるように静かに亡くなっていくというわけでは…ない?
衰弱し餓死するのをただ見守るなんて、それはちょっと辛い。
尊厳死ってそういうことなの?
息子、息子の嫁、娘(妹)、それぞれの立場での思いはすごくよくわかった。
きっと私でも同じように思っただろう。
そして、伯母さん(母親の兄妹)はやはりそう言うだろう。
私だったらどうするか?考えるけど答えはわからない。
どちらを選んでも「これで良かった」と思えないかもしれない。
母親自身の意思。これからの事…色々考える。
でも、手を触ると温かい。ただ眠っているかのような母親の命を止めてしまっていいのだろうか?
というのも絶対に思うだろう。
私自身も「尊厳死」には多分賛成だと思う。
無駄に延命治療などしたくない。
それは、自分の為でもあるけれど、それよりも残された子供たちに負担をかけたくないから。
辛い思いをさせたくないから。
あの母親もきっと同じ思いだったはず。
だけど、子供の事を思っての意思決定も子供たちにこんなにも辛い思いをさせてしまうのか、と知った今回のこの映画。
「生き方」と「死に方」
どちらも大切で、どちらもしっかりと考えていかないといけないこと。
途中、泣いてうずくまり、また立ち上がって暗く長い病院の廊下を歩いていく主人公が印象的なラストでした。
ぬちがふう(命果報)-玉砕場からの証言
監督:朴嘉南
キャスト:垣花武一、宮平春子、シム・ジェオンほか
2012年製作/137分
実際に体験した人から聞く話は、これほどまでに重く深く心に残るのか。
私自身、広島で生まれ育ったので「戦争」「原爆」の話は小学生の頃から深く関わってきたし、実際他県出身の旦那と比べたら平和について学んできた時間も思いも全然違うんだな、と感じていたのですが。
映像や本やニュースやネットや今まで触れてきた戦争に関すること全部を吹き飛ばすほど、たった一人の「記憶」の方が衝撃的だということを知ったこの映画。
何十年たった今でもハッキリと、その時の情景、言葉、同級生の名前、表情を語ることが出来るのは❝忘れられない出来事❞だったからで、それほどまでにその人の中に深く刻み込まれた事だから。
きっと何十年もずっと辛く苦しんできたことなんだと思う。
もしかしたら…広く伝えられていることは真実ではないのかもしれない。
そんなことも思った。
生きることを許されなかった。
だから、生きていることが喜びで、命をつなぐことが喜び。命がつながっていくことが喜び。
沖縄の人達と朝鮮人が虫けらのように扱われたこと。
まだ中学生の少年兵も捨て身の肉弾として死んでいったこと。
慰安婦として連れてこられた十代の女の子達のこと。
朝鮮兵軍属のこと。
その当時に見たこと、聞いたこと、してきたこと。
話を聞きながら想像して苦しくなった。
「あの時は可哀想なことをした。申し訳なかった。」
生き残った老人が詫びていた。
「でも、あの時は戦争だったから」
戦争中だったのだから仕方ない。
みんなそうだった。
それが普通だった。
沖縄の人々や朝鮮の人たちにしてきたこと全てが「仕方のないこと」と納得してしまうのが❝戦争❞なんだとしたら、やはり戦争は何があっても絶対にしてはいけないものだし、あってはいけないものだと思う。
こうして実際に戦争を体験した人から直接に話を聞ける時間は、正直残り少ない。
大切なのは、ほんの少しでもいいから「関心を持つこと」、そして「知ること」

最後に
何度も言ってしまいますが、
ある監督の初期の作品、俳優の染谷将太が監督をした作品、今泉力哉監督の作品、知らない監督の作品でもあらすじを読んで面白そう!と思ったものもたくさんありました。
サンクスシアターは全部で何作品あったのかわかりませんが、中にはアマゾンプライムビデオやその他の動画配信サイトで観ることが出来るものもあるようです。
そして、いまだ収まる気配のないコロナ問題。
ミニシアターが危機的状態にあることには全く変わりがない、というかここまで長引いて更に厳しい状態に置かれています。
コロナが収束したら(それまで我慢)で大丈夫なのかな。